【OGW】無色呪文の歴史(無色マナシンボルと新基本土地《荒地/Wastes》について)と懸念
【OGW】無色呪文の歴史(無色マナシンボルと新基本土地《荒地/Wastes》について)と懸念
【OGW】無色呪文の歴史(無色マナシンボルと新基本土地《荒地/Wastes》について)と懸念
自分の書いた少し前の記事「【BFZ】呪文が無色である意味は?(欠色):http://heppocobuilder.diarynote.jp/201509010000562240/」が、当たらずとも遠からずな内容で、ちょっと驚いています。

しかし、驚き以上に、混乱の方が大きいですね。

「◇」こと無色マナと、マナコストである「不特定マナコスト」は、確かに、感覚的には似通ってこそいましたが、ルール上の定義としては明確に異なる概念でした。
よって、それを差別化し、デザインの枠を拡張することに何ら反論はありません。

ですが、お陰様で、無色呪文業界は大混乱です。

昔は、無色の呪文といえば「アーティファクト呪文」のことだと決まっていたのですが、「有色アーティファクト」なるものが生み出されて以来、「アーティファクト」は単なる呪文タイプを意味するようになりました。
そして、ファイレクシア・マナ・シンボルがこの傾向をさらに加速させていきました。
結果、現代のマジックにおいて、「呪文が無色であること」の意味合いは、「無色」という言葉ひとつで説明できない多義性を孕んでしまいました。
すなわち、様々な無色呪文が存在しているために、「どの種類の無色呪文?」となってしまうわけです。
我らがアイドル、マローはマジックにおける「豊かなカード・デザイン」と、その結果、副次的に生じる「複雑さ」の問題によく言及していますが、ここ最近のデザインは「一見、シンプルに理解できること」を実現するために、「マジックというゲームの全体像」を安易に歪めてしまいがちです。
これには苦言を呈しておきたいです。


■無色呪文の歴史
さて。
では、今のマジックには、一体いくつの「無色っぽい(?)呪文」が存在するのでしょう?
思いつく限りを列挙してみましょう。

(1)アーティファクト呪文
アーティファクト、及びアーティファクト・クリーチャーが唯一の無色呪文であった時代はとても長いものでした。
呪文が無色であることは、常に「その呪文を唱えるためには、色マナは必要ない」ことを意味し、どの色のデッキにも入れることが出来る呪文カードとしての役割を純粋に果たしていました。
《恐怖/Terror》で死なないとか、色々と副次的なフレーバーは定められていましたが、それでも「デッキの色に縛られないで使える呪文」という、非常にわかりやすい存在だったと思います。

(2)無色のダメージ発生源、あるいは、無色になる、そして……
アイスエイジ/Ice Ageのレア、《Ghostly Flame》は黒と赤のパーマネントと呪文を「無色のダメージ発生源」にするエンチャントでした。
この《Ghostly Flame》を前例としてミラージュ/Mirageにて印刷された《烈火の精/Raging Spirit》は、起動型能力によって無色のパーマネントになることが出来ました。
もちろん、《Ghostly Flame》や《烈火の精/Raging Spirit》を唱えるためには、マナコストの欄にあるように色マナが必要でしたから、これを無色呪文として扱うのは間違いです。
また、《Ghostly Flame》や《烈火の精/Raging Spirit》の無色性は、あくまでも《防御円》やプロテクションに対抗するための一手段であって、今日でいうところの「無色呪文」とは別のコンセプトによるものです。
しかし、この系譜は、インベイジョン/Invasionにて同型再版の《年経たカヴー/Ancient Kavu》が刷られ、《霊炎スリヴァー/Ghostflame Sliver》というリメイクを経て、未来予知/Future Sightの《幽霊火/Ghostfire》へと至ります。
この《幽霊火/Ghostfire》は、唱えるためには色マナが必要である「無色呪文」であり、ゲーム中に求められている役割こそ異なりますが、明らかに「欠色/Devoid」に繋がる系譜であったと言えるでしょう。

(3)無色の、しかしアーティファクトではないクリーチャー・トークン
無色の呪文カードがアーティファクトという呪文タイプに縛られていた頃、トークンの方は一歩先にアーティファクトの縛りを抜け出すことに成功します。
ストロングホールド/Strongholdにて登場した《スリヴァーの女王/Sliver Queen》は、無色のスリヴァー・クリーチャー・トークンを産むレジェンドでした。
スリヴァーというクリーチャー・タイプが5色すべてに存在していたため、その雛にあたるトークンを「無色」とするのがフレーバー的には正しいという考えでしょう。
しかし、トークンが無色であることは当時それほど注目されなかった気がします。
むしろ、《スリヴァーの女王/Sliver Queen》が5色のレジェンドであった点や、当時にしては破格であったマナレシオばかりが注目されていたと思います。
ちなみに、この「無色のアーティファクトではないクリーチャー・トークン」の発想は、神河ブロックの「スピリット・クリーチャー・トークン」へと発展していきます。
いずれも、「無色であること」の意味はそれほど重視されていませんね。
どちらかと言えば、「色を一つに決められないから、無色」という考え方でしょう。

(4)変異
アーティファクト類だけが無色呪文であった時代は、オンスロート/Onslaughtにて終わりを迎えます。
とは言っても、《Illusionary Mask》という前例があり、裏向きで唱えられるクリーチャー呪文という特殊な形式(しかも、表になるために必要な変異コストには色マナのコストが課せられている。その意味で、呪文と色をめぐるコンセプトは従来通り)でしたから、それほど「無色の呪文であること」にスポットライトは当たっていなかったのかな、と思います。

(5)有色のアーティファクト
「アーティファクト呪文は無色である」という根底が覆るのは、しかし、非常に小さな試みからでした。
インベイジョン/Invasionにて印刷された《合金のゴーレム/Alloy Golem》は戦場に出ると同時に、選ばれた色を持つようになるアーティファクト・クリーチャー。
「アーティファクトが色を持つ」ことへの挑戦は、より拡張され、ディセンション/Dissensionの《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》へと発展していきます。
この時点では、「アーティファクト呪文を唱えるためには、色マナは必要ない」という従来通りのルールが守られていましたから、それほど奇抜な印象はなく、どちらかと言えば、アプローチ自体は(2)で挙げた《Ghostly Flame》や《烈火の精/Raging Spirit》に似たものに思えます。
しかし、「1体のゴーレムにとっては小さな1歩だったかもしれないが、アーティファクト全体にとっては大きな1歩だった」ようです。
未来予知/Future Sightという寛大な場を足がかりに、色マナをマナコストに持つ《サルコマイトのマイア/Sarcomite Myr》が登場し、その後、アラーラの断片/Shard of Alaraでエスパー/Esperのテーマとして花開きます。
大量に印刷される有色アーティファクト。
もし、この有色アーティファクトがこのブロック限定で許されたデザイン空間であるなら、ちょっとした面白みで済んでいたのかもしれません。
しかし、この有色アーティファクトというデザインは、ありとあらゆるエキスパンションで濫用されていくのです。
「無色の呪文といえば、アーティファクト」であり、「アーティファクトといえば、無色の呪文」である。
アーティファクトと無色を巡るこの考え方の片輪であった後者が失われた瞬間でした。
これ以降、「アーティファクト」と「無色」の繋がりは途切れ、アーティファクトは単ある呪文タイプを示すだけの存在に成り下がります。
テーロス/Therosにおける「伝説のアーティファクト・エンチャントのサイクル」が、これの良い具体例となるでしょう。
(ちなみに、テーロス/Therosでは、「アーティファクトであること」だけでなく「エンチャントであること」の意味合いも、これまで以上に曖昧に扱われています。)

(6)単色混成マナ・シンボル
シャドウムーア・ブロック/Shadowmoor Blockにて登場した混成マナ・シンボルという、これまでになかった多色の概念は、「単色混成マナ・シンボル」という事実上の「無色呪文」の存在を許してしまいました。
ただし、「色マナを支払った場合よりも、不特定マナコストで支払った場合の方が、割高である」という発想そのものは、初期のアーティファクトに似た考え方であり、ゲームにおける「色の扱い」をそれほど破壊したとは言えません。
単色混成マナ・シンボルが破壊したのは、別の2つの概念です。
1つは、「呪文を唱えるために必要なマナコストとして求める色マナと、呪文の色の関係」です。
ピッチ・スペルという前例を出せば、些細な破壊だったのかもしれません。
しかし、不特定マナだけで唱えられる有色呪文というのは、これまでの「呪文の色」の考え方からすれば、明らかに異端です。
そして2つめは、「アーティファクトではない(事実上の)無色呪文」という領域を切り開いたという意味での破壊です。
有色アーティファクトが登場していた時点で、「アーティファクトといえば、無色の呪文である」という不文律のようなものは廃れていましたが、もう一方の不文律、すなわち「色マナを使わずに唱えられる呪文といえば、アーティファクトである」が静かに消滅したのです。

(7)エルドラージ呪文
エルドラージ覚醒/Rise of the Eldraziにて、ついに「真の無色呪文」が登場します。
しかし、アーティファクトではない無色のクリーチャーというものは、《スリヴァーの女王/Sliver Queen》のトークンが既に通った道であり、アーティファクトであることと無色であることの関係性が絶たれていたため、マジックにおける禁忌を犯した印象はありません。
また、無色のインスタント及びソーサリー呪文に関しても、「部族呪文―エルドラージ」という位置づけであり、その効果もエルドラージに関する内容であったため、どちらかといえば、「エルドラージという色」が付け加えられたかのような感覚に見えました。

(8)ファイレクシア・マナ・シンボル
単色混成マナ・シンボルが侵した「(事実上の)無色呪文」の領域は、まさにファイレクシアの油の如く、マジックの色の概念を破壊していきます。
新たなるファイレクシア/New Phyrexiaで扱ったファイレクシア・マナ・シンボルは、単色混成マナ・シンボルが守っていた「色マナを支払った場合よりも、不特定マナコストで支払った場合の方が、割高である」という発想を覆し、「より安価な無色呪文」が環境に溢れました。
「ファイレクシア・マナ・シンボル」が「単色混成マナ・シンボル」の後継であったことは疑いようがないでしょう。
「ファイレクシア・マナ・シンボル」は、「不特定マナだけで唱えることができる有色呪文」であり、「アーティファクトではない(事実上の)無色呪文」という、混乱の極地でした。

(9)欠色
戦乱のゼンディカー/Battle for Zendikarにて登場したキーワード「欠色/Devoid」。
その祖は、テキスト表記の側面から見れば、(2)で挙げた《Ghostly Flame》や《烈火の精/Raging Spirit》の発展系と言えます。
そして、ゲーム上の役割は、フレーバーの側面を重視した陣営分けであり、(7)で挙げた「サブタイプ:エルドラージ」以上のものではありません。
しかし、数が問題なのです。
ほんの数枚であれば、特徴的な例外としてゲームの彩りを添えてくれるでしょう。
ですが、それがカードプール全体を覆い尽くしてしまえば、我々はゲームの軸を見失ってしまうのです。
「マナコストとして求められる色マナと、呪文の色の関係性」は、単色混成マナ・シンボルとファイレクシア・マナ・シンボルが破壊してしまいました。
「欠色/Devoid」が崩してしまったルールは、「その呪文が無色であることの意味」です。
この段階において、呪文やパーマネントの「色」が、サブタイプと同格の存在に扱われているのです。
戦乱のゼンディカー/Battle for Zendikarだけを見た場合、マジックの世界のおける「無色であること」の意味合いは、かなり無味乾燥とした存在に貶められているように思います。

(10)◇マナシンボル
「マナコストに無色マナシンボルを含むこと」は「呪文が無色であること」を意味しません。
まだ、カードリストの全体が明らかになっていないため、何とも言えませんが、想定する限りにおいて「マナコストに無色マナシンボルを含む、有色の呪文」は存在しうるのです。
では、「呪文が無色であること」は一体何に依るのでしょう?
この◇マナシンボルが、「無色の顔をした6色目」としてマジックというゲーム全体を食らいつくしてしまわないか、ゼンディカー人に似た恐れを感じずにはいられません。


■それで、「無色」って?
上に書き連ねたように、「無色であること」の意味合いは、今やかなり複雑なものとなりました。

・その呪文/パーマネントは何色であるのか?
・アーティファクトとは何か?
・不特定マナとは何か?
・「~は無色である」の意味とは?
・◇マナシンボルとは何か?

これらの概念を、混乱させずに初心者に説明できる自信が私にはありません(笑)

ちなみに、◇マナシンボルと新基本土地《荒地/Wastes》を見て、私は以下のカードたちを思い浮かべました。
いずれも、「無色の呪文」の歴史に翻弄されてきた、そしてこれからも翻弄されるであろうカードたちです。
◇マナシンボルが登場してしまった以上、印刷された当時のままの役割を果たすことは、もうなさそうです。

《天界の曙光/Celestial Dawn》
エンチャント
あなたがコントロールする土地は平地(Plains)である。
あなたがオーナーである、土地ではなく戦場に出ていないカードと、あなたがコントロールする呪文と、あなたがコントロールする土地でないパーマネントは白である。
あなたは、白マナを好きな色のマナであるかのように支払ってもよい。あなたは他のマナを無色マナであるかのようにのみ支払ってもよい。

白マナで◇マナコストを支払うことはできるのか?

《マイコシンスの格子/Mycosynth Lattice》
アーティファクト
すべてのパーマネントは、そのタイプに加えてアーティファクトである。
戦場以外にあるすべてのカード、すべての呪文、すべてのパーマネントは無色である。
プレイヤーは、マナをすべての色のマナであるかのように支払ってもよい。

「アーティファクトであること」と「無色であること」と「マナコストに◇マナシンボルを含むこと」は今や別々の意味を持ってしまいました。

《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
伝説の土地
各土地はそれの他のタイプに加えて沼(Swamp)である。

その隣に《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》があるとき、新基本土地《荒地/Wastes》は無色マナを生み出すことができるのか?

オラクルが待たれる。

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