レガシー&スタン視点での『戦乱のゼンディカー』
レガシー&スタン視点での『戦乱のゼンディカー』
レガシー&スタン視点での『戦乱のゼンディカー』
『戦乱のゼンディカー』のフルスポイラーが公開されましたね(随分と前に)。
リストを眺めてみればすぐに気付くことですが、今回はかなり地味目な調整がなされています。
カードパワーは全体的に抑え気味であり、レガシーを含む下の環境に影響を与えるカードはそれほど多くはなさそうです。
まぁ、エターナル・フォーマットはWotCの失敗作が堆積して出来上がった世紀末世界のようなものなので、そこに新顔が現れないということは歓迎すべきであり、そしてWotCを賞賛すべきなのでしょう。

ちなみに、私はカードパワーが低い環境が大好きです。
明確に強いとされるアクションやカードを見分けにくい環境は熟すまでに時間を要するため、新しいスタンダードのローテーション速度も相成って、流動性の高いゲームが楽しめるはず。
これを機に、スタンダードも嗜んでみようかなと考えているくらいです。

なので、今回はレガシー視点のみならず、スタンダード視点でも活躍しそうなカードをピックアップしていくことにします。

では、まずは、レガシー視点から。
今回、レガシー視点のピックアップは、たったの1枚です。


■《深海の主、キオーラ/Kiora, Master of the Depths》
レガシーという魔境であってさえ、マジックは2つの屋台骨でゲームに制限を与えています。
それは、マナと手札です。
マジックのすべてのカード・デザインは、効果とマナコストの際どいバランス感覚の上に成り立っています。
マナコストは電気抵抗のように、あらゆるカードの暴走に歯止めをかけているわけです。
なので、この調整を誤れば、そのカードは使われすぎるか、まったく使われないことになります。
これが1つ目の屋台骨。
また、マジックは、手札という限られた選択肢(それも無作為な選択肢)から勝利までの道筋を見つけだすゲーム。
ですから、カードを引き放題、探し放題ではゲームが破綻してしまいます。
よって、そのようなことは起こらないようにデザインされています。
これが2つ目の屋台骨です。

つまり、マジックにおいて「壊れた」カードとは、この2つの屋台骨に挑み、揺るがそうとする手段を意味します。
そして、《深海の主、キオーラ/Kiora, Master of the Depths》はこの2つの屋台骨に対する挑戦を完全なまでにサポートしてくれます。
レガシー環境において、《深海の主、キオーラ/Kiora, Master of the Depths》の最適な相棒は、恐らく《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を経由して3ターン目に着地し、その場で1つ目の能力を用いて、《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》を起こします。
それからは《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》の2つ目、3つ目の起動型能力を使うもよし、別の2マナの呪文を唱えるもよしです。
このように《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》よりは軽いプレインズ・ウォーカ―であるため、区別して使われるのではないでしょうか。

以上、レガシー視点でした。

では、次はスタンダード視点から。
というか、今回はこっちが本題です。

恐らく、『戦乱のゼンディカー』以降のスタンダードをWotCは低速環境としてデザインしているはずです。
従って、低速環境において、相手を出し抜くカードが強いと想定されます
それは、
①相手の低速戦略の準備が完了する前に勝つためのカード
②相手よりも早く低速戦略の準備を完了させるためのカード
③低速戦略の中で、最もマナ効率に優れ、かつ脅威となる効果を及ぼすカード
これら3種です。

そして、『戦乱のゼンディカー』を含め、スタンダード環境を構成するカード・プールを俯瞰すれば、除去手段の多さが目に付きます。
有効な単体除去呪文は、ほぼすべての色に分配され、リセット呪文に関しても、かなり強力なものが揃えられています。

つまり、これはパーマネントがクリーチャーの形をしている限り、常に除去されてしまう可能性があるということです。
巨大なエルドラージであれ、大量のトークンであれ、戦場において支配的であり続けることは困難なのです。

こういった事情を念頭に置きつつ、有力なカードを探してみました。


■《アクームの石覚まし/Akoum Stonewaker》
これは上で述べた①速攻デッキ用カード、です。
3ターン目から5点のクロックを用意できます。
『戦乱のゼンディカー』では、低速戦略を成立させるためのチャンプ・ブロッカーが大量に収録されています。
従って、かつてのゼンディカー時代に流行したような「パンプ型の上陸ウィニー」が突き立てようとする牙は、残念ながら対戦相手まで届きません。
しかし、《アクームの石覚まし/Akoum Stonewaker》の生み出すトークンの場合、(3点という打点の高さも魅力的ではありますが、それ以上に)トランプルが光ります。
また、ゲーム中盤であってもフェッチランドを経由しての、トークン2体展開が可能です。
ゲーム序盤だけ輝くウィニー・クリーチャー以上の働きが期待できます。
さらに、(これはトークン生成カードの常ですが)手札を消費しないで済むわけで、これは低速環境にマッチしていると言わざるを得ません。
すなわち、土地カードを重視した速攻デッキという非常に珍妙なアーキタイプが想定されるわけですが、フェッチランドもありますし、作れないことはないと思います。
一押しの一枚です。

■《ニッサの復興/Nissa’s Renewal》
重たいマナ加速呪文(ライフ回復機能付き)。
通常、マナを伸ばすための手段は低いマナコストであることが採用条件となります。
このカードのように、6マナもする呪文を唱えられるようなマナ基盤がすでに成立しているなら、今さら土地を伸ばす意義もないでしょうと、まぁ、そういう理屈ですね。
しかし、今作『戦乱のゼンディカー』の緑カラーは、これまでとは事情が異なります。
『戦乱のゼンディカー』において、最も未知数かつ不気味な存在が、エルドラージ・末裔・トークンです。
前作のエルドラージ・落とし子・トークンとは異なり、パワーを有することから、一般的な意味でのクリーチャー・トークンの役割を果たし、さらにはマナとして消費することも可能です。
つまり、巷にありふれている1/1のクリーチャー・トークンの完全上位互換であるわけで。
まぁ、ふつうに考えて、活躍しないはずがないです。
で、そのエルドラージ・末裔・トークンが力を発揮するとしたら、一時的なマナ加速を後押しする場面です。
マナ加速をして、何をするのか。
ええ、《ニッサの復興/Nissa’s Renewal》を唱えましょう。
一時的なマナ加速手段に溢れた環境であるなら、重たいマナ加速呪文にも居場所があります。
エルドラージ・末裔・トークンは土地カードへと姿を変え、恒久的なマナ供給手段として生まれ変わるわけです。
そして、恒久的なマナ供給手段から次なる脅威を展開するまでの猶予を確保するのに、7点というライフは非常に有効であるはずなのです。

■《乱動を刻む者、ノヤン・ダール/Noyan Dar, Roil Shaper》
「覚醒/Awaken」は地味ながら強力な効果です。
デッキのスロットを圧迫せずにクリーチャーの数を増やすことのできる効果の優位性は、ミシュラ・ランド達がすでに証明してくれています。
さらに、「覚醒/Awaken」の場合、クリーチャーのサイズはより大きく、3/3~4/4が平均となりそうです。もちろん、効果を重ねた場合はより大きく育つでしょう。
コントロール・デッキのフィニッシャーとして頼れる頑丈なサイズだと思います。
しかし、この環境には除去手段が豊富に用意されている事実を忘れてはいけません。
コントロール・デッキにとっての生命線は、手札とマナです。
「覚醒/Awaken」によって動き出した土地クリーチャーは、しかしミシュラ・ランドのそれと異なり、除去されやすいクリーチャー形態のまま相手のターンを迎えます。
打ち消し呪文は万能ではありませんから、戦闘や相手の除去呪文を受けて、あなたの土地クリーチャーが破壊されてしまうことはありえるでしょう。
クリーチャーが減る分にはそれほど大事にはなりませんが、土地が減ってしまうのは困りものです。
すなわち、「覚醒/Awaken」を活用したデッキを構築する場合、ゲームの中盤以降も土地カードを場に供給し続けなければならないわけです。
「覚醒/Awaken」呪文でデッキリストを固めた白青コントロールは、堅牢に見えて、実は脆そうです。
また、白青コントロールが動き始めるであろう頃には、マナ域の重なるエルドラージ系統の超重量級デッキも活動を開始してしまいます。
以上の理由で、この2者間でマナ加速競争が発生することもまた必然です。
よって、白青コントロールではなく、白青コントロールにする必要が出てきます。
緑カラーの「土地を探して場に出す系統の呪文」(ようは、ランパン呪文)を前提としたデッキにするわけです。
ここに、もし《乱動を刻む者、ノヤン・ダール/Noyan Dar, Roil Shaper》があれば、これらランパン呪文をすべて「覚醒/Awaken」呪文として駆使できます。
さらには、インスタント・タイミングでの「覚醒/Awaken」を頻発させることが可能となり、より柔軟な戦術も選択肢に含めることができます。
本人が4/5であれば、さらに言うことなしだったのですが、まぁ、追加コストが必要ない点に免じて、許してあげましょう。

以下、次点となるカード達。

■《塵への崩壊/Crumble to Dust》
■《火山の隆起/Volcanic Upheaval》
土地破壊呪文2種。
低速環境において4マナは決して重すぎる呪文とは言えず、まさに環境に水を差す存在となりそうです。
悪さをしそうな理由は、これが2種類も用意されていること。
4枚だけではデッキになりませんが、8枚積めるとなれば話は別です。
しかも、その内の1種はロボトミー効果ですから、土地破壊呪文としてこれほど厄介なものもありません。
あくまでもメタ・ゲームと、使われる特殊土地の傾向次第ですが、決して無視することの出来ないカードでしょう。

■《放浪する森林/Woodland Wanderer》
強いです。
もし、戦闘自体がゲーム局面において重要な役回りを果たすようであれば、活躍すると思われます。

コメント

しもべの一人、H
2015年9月24日2:08

>アクームの石覚まし
こいつの3t目5点クロックは魅力ですよね。しかも2体に分けてるのでよりダメージを通しやすい。
誘発に3マナ掛かる点と土地を置けるかが気になるところですよね。
誘発の効果はデメリットとしては自分の展開を阻害しかねないし、順番待ちをしていたら価値が薄れてしまう可能性がある点で、逆にやる事が無い時にも戦力投入できるのはメリットですよね。
もっと気になるところは一々誘発に土地を使うのでSlighとしては不安定。
特に中盤以降にハンドに土地が残ってない点も考えられますからね。うまくプレイングでカバーしたりする必要性もそうです。

くらん(へっぽこビルダー)
2015年9月25日0:33

>しもべの一人、Hさん
コメントありがとうございます。

仰るように、《アクームの石覚まし/Akoum Stonewaker》の弱点は、これの居場所であろうデッキタイプ:Slighの挙動と、これの上陸能力が微妙に噛み合っていないことです。
誘発能力のコストである3マナを重いと見るか、妥当と見るかは環境の速度次第なので何とも言えませんが、これを2ターン目に場に出し、3ターン目~4ターン目くらいは連続して土地をセットしたいところ。
あるいは、これ自体が殴れるサイズ(2/1)をしている点を加味すれば、これの誘発能力を期待しすぎてはいけないのかもしれません。
通常のSlighとしてクロックを展開していく中で、中盤以降、Slighにとって無駄なドローとなってしまう可能性の高い土地ドローを、コスト{1}{R}の《火花の精霊/Spark Elemental》に交換してくれる生物だと認識した方が、デッキを構築しやすいかもしれません。

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